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ヘッジ会計の概要

ヘッジ会計の概要
【設例:Sub-LIBORをヘッジ対象とする場合】
3か月LIBOR-20bpsとなっている変動金利貸付金(フロアーあり)をヘッジ対象 、3か月LIBORを参照する金利スワップをヘッジ手段とする場合、3か月LIBORが20bps以上の時にはヘッジ対象とヘッジ手段の公正価値の変動は一致します。
ところが、3か月LIBORが20bpsを下回ると、ヘッジ対象の金利変動はゼロになる一方で、ヘッジ手段である3か月LIBORを参照する金利スワップは20bps未満であっても金利変動が起こるため、 ヘッジ会計の概要 ヘッジ会計の概要 公正価値の変動はヘッジ対象とヘッジ手段で一致しません 。
一方で、変動金利貸付金のキャッシュ・フローの全体を 3か月LIBORについてヘッジ対象として指定する場合 には、LIBORが20bpsを下回るときに、 ヘッジ対象とヘッジ手段の間にヘッジ非有効部分が生じるという経済的なミスマッチを適切に表現できる ため、この指定は認められています。

【コラム】(インフラプロジェクト事業開発・運営の現場から)第17回 TICAD7を終えて/「ヘッジ会計」(IFRS9)の実務概要

前回 第16回のコラム では、TICAD 7(第7回アフリカ開発会議)開催にあたって、TICADの歴史や性質の変遷、アフリカ市場の多様性について記載した。コラム掲載(2019年8月29日)の翌日に成果文書として採択・発表された「横浜宣言2019」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ticad/ticad7/pdf/yokohama_declaration_ja.pdf)では、

  • アフリカが「特に農業、産業、インフラ、エネルギー、ICT等の」「セクターにおける」「大きな投資機会を国内外の投資家に提供して」おり、「投資家にとって魅力的な投資先」であること
  • TICADが「質の高いインフラへの投資」(英語では“investment in quality infrastructure”)に貢献すること
  • 「インフラが経済の成長と繁栄の重要な原動力であ」り、「エネルギー源、特に太陽光エネルギー、地熱や水力エネルギーを含む再生可能エネルギー」等が、持続可能な経済、社会等に貢献すること
  • 「『質の高いインフラ投資に関するG20原則』に沿って、アフリカ開発銀行と日本の資金協力により質の高いインフラ投資が行われる」こと、
  • ヘッジ会計の概要
  • 日本の「オフグリッドエネルギーに係る支援」や「地熱発電を含む再生可能エネルギーに係る支援」によって、「アフリカのエネルギーアクセスが向上する」こと、
  • 「JBICのアフリカ貿易投資促進ファシリティ(FAITH)/JOGMECによるリスクマネー供給/NEXIがアフリカ貿易保険機構やイスラム開発銀行等と連携し、輸入費用およびプロジェクト融資の100%をカバーする新スキームを構築」することによって、「民間セクターによる対アフリカ貿易・投資が促進される」こと

なお実際にアフリカにおけるインフラプロジェクトに対する投融資を検討・実行するにあたっては、ソブリンリスクおよびそのヘッジのためのストラクチャー(例;プロジェクト所在国による政府保証や、同政府保証を更に補完するものとしてのECA(Export Credit Agency、輸出信用機関、日本であればJBICやNEXI)による保証、Multilateral(多国籍期間、世界銀行グループ等)による保証等)の構築が必要となるケースが多いと思われる。新興国インフラ案件における政府保証の内容や、ECA・Multilateralによる保証の内容・保証履行条件等については、後日改めて考察する。

「ヘッジ会計」(IFRS9)の実務

本稿の残りでは、第15回のコラムの続きとして、プロジェクトカンパニーにおける「ヘッジ会計」の実務について取り上げる。ヘッジ会計は、従来はIAS(International Accounting Standard、国際会計基準)第39号「金融商品:認識および測定」の規定が適用されていたが、2018年1月1日以降に開始する事業年度からはIFRS(International Financial Reporting Standard、国際財務報告基準)第9号「金融商品」の規定が適用されることになった。(IASとIFRSの概要については第14回コラムご参照)

  • ヘッジ会計の適用にあたっては、事前の文書化が必要になるという点と
  • 「ヘッジ手段に係る利得または損失は、ヘッジとして有効な部分をその他の包括利益で、それ以外の部分を純損益で認識する」

当期純利益 40
その他包括利益(損失) (20)
包括利益 20

当期純利益 35
その他包括利益(損失) (15)
包括利益 20

では「ヘッジの有効性判定」はどのように行うべきなのであろうか?実はこの点については、IAS 39号の方が、定量基準(ヘッジの効果が80%~125%の範囲内)がはっきりしていた。IFRS 9では特定の方法の使用が要求されていない。いずれにしても、リソースが限られたプロジェクトカンパニーにとっては、ヘッジ文書の作成や公正価値変動の算定、有効性テストの実施等の要件を具備した上で、決算書ドラフトを作成せねばならず、Auditorによる監査への対応を含め、ヘッジ会計対応に伴う実務負担は小さくないと言える。公正価値の変動については、ヘッジプロバイダーである金融機関による時価評価(Mark to Market Valuation)で代用するのが簡便であるが、この場合はヘッジプロバイダーの信用リスクをどう評価し、公正価値に反映するのか?という課題が残る。

注)本稿の内容や意見は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
コラムで取り上げて欲しいテーマがあれば、 プロフィール に記載の連絡先まで個別にご連絡下さい。

ヘッジ会計の仕訳方法(繰延ヘッジと時価ヘッジ)

【ヘッジ会計の必要性】
ヘッジ手段であるデリバティブ取引については、原則的な処理方法によれば時価評価され損益が認識されることとなるが、ヘッジ対象の資産に係る相場変動等が損益に反映されない場合には、両者の損益が期間的に合理的に対応しなくなり、ヘッジ対象の相場変動等による損失の可能性がヘッジ手段によってカバーされているという経済的実態が財務諸表に反映されないこととなる。このため、 ヘッジ対象及びヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識 し、ヘッジの効果を財務諸表に反映させるヘッジ会計が必要と考えられる。
出典:金融商品会計基準96項

ヘッジ会計の必要性

ヘッジ会計の仕訳方法

ヘッジ会計の意義とその必要性について理解した上で、肝心の具体的な仕訳方法ですが、金融商品会計基準では、繰延ヘッジと時価ヘッジという2つの方法が規定されています。このうち、 繰延ヘッジが原則法 であり、 時価ヘッジが例外法 になります。

繰延ヘッジ(原則法)

ヘッジの効果

借方 金額 貸方 金額
繰延税金資産※
(資産)
40 デリバティブ
(負債:正味の債務)
100
繰延ヘッジ損益
(純資産の部)
60

ヘッジ会計の概要
借方 金額 貸方 金額
デリバティブ
(資産:正味の債権)
100 繰延税金負債※
(負債の部)
40
繰延ヘッジ損益
(純資産の部)
60
ヘッジ会計の概要

※実効税率は40%として計算している。
仕訳の出典:荻茂生、長谷川義孝「ヘッジ取引の会計と税務 第5版」(2014年6月,中央経済社)133項図表

繰延ヘッジ(原則法)

時価ヘッジ(例外法)

時価ヘッジのイメージ

表にも書いていますが、時価ヘッジでは、ヘッジ対象の時価を貸借対照表価額とすることが認められているものに限定され、金融商品会計基準の規定との関係上、 現時点ではその他有価証券のみ であると解釈されます(金融商品会計実務指針185項)

IFRS第9号 ヘッジ会計 Part-Ⅰ(ヘッジの適格要件、ヘッジ対象・手段)

なお、ヘッジ対象として適格となるのは、 外部との取引のみ ヘッジ会計の概要 であり、いわゆる 内部取引はヘッジ対象として適格とはならない 点に注意が必要です。
一方で、ヘッジ対象取引が連結会社間の内部取引であっても、ヘッジ対象リスクが 貨幣性項目の為替リスク である場合には、連結財務諸表において適格なヘッジ対象となる可能性があります。
これは、機能通貨の異なる連結会社間の貨幣性項目については、 債権債務が連結財務諸表において相殺消去されたとしても、為替差損益は連結財務諸表上消去されないため 適格なヘッジ対象として認められているものです。

IFRS第9号では、ヘッジ対象は個別に識別可能かつ信頼性をもって測定可能でなければならないとされ、 信用リスク や 契約上明記されていないインフレーション・リスク については本要件を満たすことが困難であるとされています。

なお、信用リスクのエクスポージャーに対するクレジット・デリバティブを用いたリスク管理に関する会計処理は 別途の選択肢 (FVO適用の例外処理といわれる)が定められております。

2-2.ヘッジ対象の指定

①ある項目のキャッシュ・フロー又は公正価値の変動のうち、特定のリスク(リスク要素)に起因する部分

②選択された1つ又は複数の契約上のキャッシュ・フロー

③名目金額部分、すなわち、ある項目の金額の特定の部分

  • 20X1年4月に実行される貸付金契約元本のうち、最初に実行される10,000百万円
  • 期限前償還可能な貸付金元本100百万円のうち、底溜階層部分(ボトム・レイヤー)の60百万円
    (公正価値ヘッジを適用する場合には、ヘッジ対象である底溜部分を再評価する際に期限前償還オプションの価値を含めて再評価しなければならず、これを除いて再評価することは認められません)

ある項目の構成要素とキャッシュ・フロー合計との関係

IFRS第9号には、「金融商品または非金融商品項目のキャッシュ・フローの構成要素がヘッジ対象として指定されている場合には、当該構成要素は当該項目全体のキャッシュ・フローの合計額以下でなければならない」(B6.3.21項)という原則がある。

これは、 全体のキャッシュ・フローがSub-LIBOR (LIBORよりも低い水準のこと。例えば、LIBOR-20bps)の場合には、 それより大きなLIBORをヘッジ対象として指定できない という意味である。

ただし、B6.3.31項但書では、「 項目全体のキャッシュ・フローのすべてをヘッジ対象 に指定して、 ある特定のリスクだけ について(例えば、LIBORまたはベンチマーク商品価格の変動に起因する変動についてのみ)ヘッジすることができる」とも規定されている。

【設例:Sub-LIBORをヘッジ対象とする場合】
3か月LIBOR-20bpsとなっている変動金利貸付金(フロアーあり)をヘッジ対象 、3か月LIBORを参照する金利スワップをヘッジ手段とする場合、3か月LIBORが20bps以上の時にはヘッジ対象とヘッジ手段の公正価値の変動は一致します。
ところが、3か月LIBORが20bpsを下回ると、ヘッジ対象の金利変動はゼロになる一方で、ヘッジ手段である3か月LIBORを参照する金利スワップは20bps未満であっても金利変動が起こるため、 公正価値の変動はヘッジ対象とヘッジ手段で一致しません 。
一方で、変動金利貸付金のキャッシュ・フローの全体を 3か月LIBORについてヘッジ対象として指定する場合 には、LIBORが20bpsを下回るときに、 ヘッジ対象とヘッジ手段の間にヘッジ非有効部分が生じるという経済的なミスマッチを適切に表現できる ため、この指定は認められています。

この「金融商品または非金融商品項目のキャッシュ・フローの構成要素がヘッジ対象として指定されている場合には、当該構成要素は当該項目全体のキャッシュ・フローの合計額以下でなければならない」(B6.3.21項)という原則を適用した例として、B6.3.22項では、実効金利(全体キャッシュ・フロー)がLIBORよりも低い(Sub-LIBOR)金融負債の場合には、企業が次のものを指定することができないと記述しています。

  • LIBORでの金利(公正価値ヘッジの場合には元本金額を加算)と同額の当該負債の構成要素
  • 負債の残余構成要素

【B6.3.23項】
実効金利がLIBORよりも100bps低い固定金利の金融負債の場合には、企業は当該負債全体(すなわち、元本にLIBORマイナス100bpsの金利を加えたもの)の価値の変動のうち、LIBORの変動に起因する変動を、ヘッジ対象として指定することができる。
固定金利の金融商品がその組成から一定期間経過後にヘッジされ、その間に金利が変化している場合には、企業は当該項目について支払う契約上の金利よりも高いベンチマーク金利に等しいリスク構成要素を指定することができる。
企業がそのようにできるのは、ベンチマーク金利が、企業がヘッジ対象を初めて指定する日に企業が当該金融商品を購入していたと仮定した実効金利よりも低い場合である。

実務Q&AIFRSの一般ヘッジ会計

第1章 新しい一般ヘッジ会計基準の目的・発効日
Q1-1 ヘッジ取引の定義・種類
Q1-2 ヘッジ会計基準改訂の理由
Q1-3 日本におけるヘッジ会計への問題意識
Q1-4 主要な変更点
Q1-5 顧客へのリスク転嫁
Q1-6 ヘッジ会計の目的
Q1-7 リスク管理活動
Q1-8 ヘッジ取引とヘッジ会計の関係
Q1-9 ヘッジ関係の種類
Q1-10 ヘッジ会計の手順
Q1-11 適用開始日
Q1-12 IAS39からの移行
Q1-13 IAS39の継続適用
Q1-14 マクロヘッジ
Q1-15 当初適用日における会計処理

第2章ヘッジ手段の決定
Q2-1 適格ヘッジ手段
Q2-2 デリバティブ以外の金融商品
Q2-3 非金融商品
Q2-4 為替リスク
Q2-5 グループ間貨幣性項目
Q2-6 グループ間デリバティブ
Q2-7 組込デリバティブ(IFRS9)
Q2-8 売建オプション
Q2-9 金融商品の部分
Q2-10 リスク要素ごとのヘッジ指定
Q2-11 複数リスクのヘッジ
Q2-12 ロールオーバー
Q2-13 クロスヘッジ
Q2-14 ヘッジ会計の概要 株価指数先物
Q2-15 金利通貨スワップ
Q2-16 スワップション
Q2-17 クレジットデリバティブ
Q2-18 既存のデリバティブ

第3章ヘッジ対象の決定
Q3-1 適格ヘッジ対象概論
Q3-2 事業リスク
Q3-3 政策保有株式
Q3-4 内部取引
Q3-5 確定約定・予定取引
Q3-6 外貨建確定約定
Q3-7 ヘッジ会計の概要 ヘッジ対象非適格項目
Q3-8 グループヘッジ
Q3-9 グループヘッジ要件緩和の理由
Q3-10 株式グループ
Q3-11 純額となるグループの適格ヘッジ対象要件
Q3-12 純額ポジションのキャッシュフローヘッジの制限
Q3-13 純額ポジション(ヘッジ手段損益の表示)
Q3-14 純額ポジションのキャッシュフローヘッジの例
Q3-15 純額でゼロとなるポジション
Q3-16 プロキシーヘッジ
Q3-17 会計単位
Q3-18 1年超先の予定取引
Q3-19 合計エクスポージャーの要件
Q3-20 合計エクスポージャーの例
Q3-21 部分ヘッジ
Q3-22 非金融商品のリスク要素部分のヘッジ要件
Q3-23 非金融商品のリスク要素部分のヘッジ例
Q3-24 インフレリスク
Q3-25 片側リスク
Q3-26 階層部分ヘッジの要件
Q3-27 期限前償還オプション付住宅ローン
Q3-28 階層部分ヘッジの例
Q3-29 サブLIBOR問題

第4章 有効性評価と文書化(ヘッジ会計の適格要件)
Q4-1 ヘッジ会計適格要件
Q4-2 経済的関係の存在
Q4-3 清算機関
Q4-4 信用リスクの影響
Q4-5 有効性の意味
Q4-6 80%~125%要件削除の背景
Q4-7 80%~125%要件削除のイメージ
Q4-8 有効性判定方法
Q4-9 ヘッジ有効性テスト
Q4-10 ヘッジ有効性テストの基準間差異
Q4-11 有効性評価の時期・頻度
Q4-12 リスク管理戦略とリスク管理目的
Q4-13 ヘッジ会計の概要 文書化項目と実施時期
Q4-14 非有効部分測定方法
Q4-15 仮想デリバティブ
Q4-16 ヘッジ会計の概要 非有効部分発生原因分析
Q4-17 ヘッジ比率の決定
Q4-18 実際に使用されているヘッジ比率
Q4-19 ヘッジ比率濫用の懸念
Q4-20 ショートカット法
Q4-21 回帰分析 ヘッジ会計の概要
Q4-22 内部管理体制

第5章 リバランスによるヘッジ会計の継続
Q5-1 リバランス
Q5-2 リバランスのタイミング
Q5-3 リバランスの例
Q5-4 ヘッジ会計の中止
Q5-5 任意のヘッジ会計中止の禁止
Q5-6 ヘッジ中止の会計処理
Q5-7 ヘッジの再開始(リスタート)

第6章 帳簿上のヘッジ会計処理
Q6-1 公正価値ヘッジの会計処理
Q6-2 キャッシュフローヘッジの会計処理
Q6-3 キャッシュフローヘッジ剰余金のその後
Q6-4 キャッシュフローヘッジの表示
Q6-5 “低価”テスト
Q6-6 在外営業活動体に対する純投資のヘッジ
Q6-7 仕訳例
Q6-8 非有効部分の会計処理
Q6-9 リンク表示
Q6-10 キャッシュフローヘッジのベーシスアジャストメント
Q6-11 アンダーヘッジの場合
Q6-12 ヘッジのコスト
Q6-13 ヘッジ会計の概要 ヘッジ会計の概要 オプションの時間的価値
Q6-14 ゼロコストカラー
Q6-15 調整後の時間的価値
Q6-16 先渡契約の直先差額
Q6-17 調整後の金利要素
Q6-18 為替予約の直先差額(結論の背景)
Q6-19 通貨ベーシスプレッド
Q6-20 日本基準との差異
Q6-21 金利スワップの特例処理・為替予約の振当処理
Q6-22 組込デリバティブ(日本基準)

第7章 拡張された公正価値オプション
Q7-1 公正価値オプション
Q7-2 クレジットデリバティブ
Q7-3 自己使用契約の非金融商品

第8章 開 ヘッジ会計の概要 示
Q8-1 開示の趣旨
Q8-2 IFRS7のヘッジ開示要求概要

第9章 業種別の影響
Q9-1 改訂により見込まれる主要な実務的影響
Q9-2 商社・石油会社などへの影響
Q9-3 原油のヘッジ取引
Q9-4 エネルギー商品のヘッジ
Q9-5 LNG輸入取引のヘッジ
Q9-6 わが国の業種別会計基準(銀行業)の概要とIFRS9との違い
Q9-7 わが国の業種別会計基準(保険業)の概要とIFRS9との違い

参考1 一般ヘッジ規定に関する日本基準・米国基準・IFRS9の
主要な差異
参考2 IFRS9の一般ヘッジ規定の構造

著者プロフィール 金子 康則(かねこ やすのり)
公認会計士,米国公認会計士(ニューハンプシャー州)
1995年,青山監査法人PriceWaterhouse(現あらた監査法人PricewaterhouseCoopers)入所。
大手証券会社,大手自動車会社,大手都市銀行の米国基準に基づく会計監査,PricewaterhouseCoopers London Banking and Capital Markets勤務を経験。
2007年より金融機関に勤務し,会計方針,会計アドバイザリー,自己資本規制アドバイザリー,資本政策,財務オペレーショナルリスク管理など,会計および規制をキーワードにさまざまな業務に従事。
個人的にボランティアで日本公認会計士協会の委員会活動に参加する一方,金融機関の実務的観点から,制度会計の議論・会計リテラシー促進に向けて著作活動を行っている。

著書
『公正価値会計の実務』(2009年),
『オフバランス会計の実務』(2011年),
『公正価値測定の実務Q&A』(共著,2012年)(すべて中央経済社)がある。

ヘッジ会計の概要

金融商品(financial instruments) 、金融資産(financial assets) 、金融負債(financial liability) の定義を行い、金融資産の分類と測定基準を以下のように示しています。

ヘッジ会計の概要 ヘッジ会計の概要
金融資産の分類と測定基準
金融商品の種類 保有または発行目的 測定基準 評価差額の会計処理
金融負債(デリバティブを除く) 公正価値で評価し、変動額を損益計上する金融資産 (financial assets at fair value through profit or loss) 公正価値 (fair value) 包括利益計算書に含める。
満期保有目的投資 (held-to-maturity investment) 償却原価 (amortised costs)
貸付および債権 (loans and receivables) 償却原価
売却可能金融資産 (available-for-sale finaancial assets)(上記以外) 公正価値 その他の包括利益として認識される。
金融負債(デリバティブを除く) 公正価値で評価し、変動額を損益計上する金融負債 公正価値 包括利益計算書に含める。
その他 償却原価
デリバティブ 常にトレーディング目的で保有されているもの(held for trading) とみなされる。 公正価値 包括利益計算書に含められる。ただし、ヘッジ会計の適用要件を満たす場合には、ヘッジ会計の適用を選択できる。

・ 現行IAS第39号を抜本的に改定してIFRS第9号に置き換えるプロジェクトが進行中。
・ 「分類及び測定(金融資産)」の最終基準はIFRS第9号として2009年11月に公表された。
・ 「分類及び測定(金融負債)」、「償却原価と減損」、「公正価値測定」、「ヘッジ会計」、「認識の中止」の最終基準は2010年後半にIFRS第9号に追加される予定。

1)負債性商品(例:社債、貸付金)⇒償却原価
例外:
1. 「ビジネスモデル」テストを満たさないときはFVTPL
2. 「契約上のキャッシュフローの特徴」テストを満たさないときはFVTP
3. 公正価値オプションの選択するとFVTPL
* 「ビジネスモデル」テスト・・ビジネスモデル上の目的が、契約上のキャッシュフローを回収するために金融資産を保有することかどうか。ビジネスモデルが変更された場合は再分類が必要だが、それ以外の場合は再分類は認められない。
* 「契約上のキャッシュフローの特徴」テスト・・金融資産の契約上のキャッシュフローが元本と金利で構成されるかどうか。

3)持分投資(株式)⇒FVTOCI
例外:
1. 売買目的で保有しているときはFVTPL
2. その他包括利益を通じた公正価値測定オプションを選択しないとFVTPL
* 当初認識時点で自由にFTVOCIを選択できるが、選択の取り消しはできない。売却してもOCIからPLにリサイクルする ことはできない。減損は不要。受取配当は損益で認識する。

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