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取引慣行に関する独占禁止法上の指針

取引慣行に関する独占禁止法上の指針
2021年3月29日、公正取引委員会(公取委)及び経済産業省は、スタートアップと連携事業者との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを目的として「スタートアップとの事業連携に関する指針」(以下「本指針」といいます)を公表しました。本指針は、NDA(秘密保持契約)、PoC(技術検証)契約、共同研究契約及びライセンス契約という4つの契約類型に着目し、これらの契約において生じる問題事例とその事例に対する独占禁止法上の考え方を整理するとともに、それらの具体的改善の方向として、問題の背景及び解決の方向性を示したものです。本稿では、本指針について、独占禁止法上の考え方を中心に解説します。

独占禁止法

27.抱き合わせ販売の違法性判断基準

抱き合わされる商品の取引分野における自由競争の減殺(競争者被害型)

顧客の選択の自由を侵害することによる競争手段の不公正さ(不用商品型)

流通ガイドラインの規定

抱き合わせ販売は、事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限に当たります。事業者による取引先事業者の事業活動に対する制限は、垂直的制限行為のうち非価格制限行為に当たります。抱き合わせ販売の場合は、そもそも抱き合わせ販売といえるかの判断が必要になります。その手順を示せば以下のようになります。

(2) 抱き合わせ販売に当たるとして、その違法性判断基準はどうか。

公正競争阻害性があるか

取引慣行に関する独占禁止法上の指針 競争促進効果

- 競争阻害効果

公正競争阻害性の内容

市場閉鎖効果

価格維持効果

公正競争阻害性の有無を判断するための判断資料

① ブランド間競争 の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規参入の難易性等) ② ブランド内競争 の状況(価格のバラツキの状況、当該商品を取り扱っている 流通業者等の業態等) ③ 垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位(市場シェア、順位、ブランド力等) ④ 垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響(取引慣行に関する独占禁止法上の指針 制限の程度・態様等) ⑤ 垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位

セーフハーバールール

同じ行為でも、有力な事業者が行えば、違法となるおそれがあるが、他方、市場におけるシェアが20%以下である事業者や新規参入者がこれらの行為を行う場合には、そのおそれはない(「市場における有力な事業者」基準)とされます。

抱き合わせ販売に関する制限については、実際、上記の日本マイクロソフト事件に見られるように、大きなメーカーや卸売業者から下流の卸売業者又は小売業者等が、必ずしも仕入れる必要のない商品を仕入れさせられるように、多くの企業にとって、拘束する側ではなく、拘束される側の問題として扱われると思います。具体的には、メーカーから、組売りされている製品の購入を拒否したことをもって契約違反として継続的取引契約が解除された場合に同制約が独禁法に反し無効であることを主張したり、先んじて、独禁法に基づいて契約条項やこれまでの取引のルーティンの改訂を求めたりという場面で、ガイドラインを役立てることができると思われます。

独占禁止法研究

独占禁止法研究

内容説明

目次

第1章 競争法の基本体系
第1節 日本の競争法制の特質
法継受における失敗-原罪
不公正な取引方法
初期の判決の悪影響 取引慣行に関する独占禁止法上の指針
今後の課題
第2節 国際的な競争法の展開
競争法の基本体系
米国反トラスト法
EC競争法
競争法の展開
国際的な執行体制

第2章 垂直制限規制・抱き合わせ規制の新たな展開
第1節 化粧品流通をめぐる独占禁止法違反事件の分析
-対面販売、卸販売、価格拘束に関する独占禁止法上のルール
流通・取引慣行に関する指針 取引慣行に関する独占禁止法上の指針
資生堂対富士喜本店事件
オッペン化粧品事件
花王化粧品対江川企画事件
資生堂対河内屋事件
公正取引委員会対資生堂事件
第2節 EC競争法における選択的流通制度
選択的流通制度
メトロ(第一次)EC裁判所判決
メトロ(第二次)EC裁判所判決
AEG事件EC裁判所判決
YSLP EC委員会決定
第3節 米国の1987年シャープ事件最高裁判決
事実の概要
判旨-多数意見
判旨-反対意見
本件の解説
第4節 日本への選択的流通制度導入の可能性
ECの選択的流通制度
イヴ・サンローラン決定
米国での流通規制
日本における化粧品流通についての規制
日本への選択的流通制度導入の可能性
第5節 抱き合わせ規制の新たな展開
-機器・部品・保守サービスの抱き合わせをめぐって
本件抱き合わせとEC競争法
本件抱き合わせと反トラスト法
本件抱き合わせと独占禁止法

第3章 企業結合規制の見直し
第1節 米国の1992年水平合併ガイドライン
1992年水平合併ガイドラインの概要
1992年水平合併ガイドラインの特徴
第2節 企業結合規制における規制手続の問題点と課題
米国反トラスト法
EC競争法
独占禁止法
今後の課題
第3節 独占禁止法上の株式保有規制の課題 取引慣行に関する独占禁止法上の指針
-市場集中規制と一般集中規制の整合性
株式保有規制の課題
事前届出制の導入
事件審査の実施
実体的規制基準
持株会社の解禁
現行9条改正案とその問題点
大規模会社の株式保有総額の制限
第4節 1997年独占禁止法改正法案
-一般集中規制の終焉
一般集中規制の理念
改正9条による持株会社規制 取引慣行に関する独占禁止法上の指針
9条の2の取扱い
11条の取扱い

第4章 知的財産権の行使と独占禁止法
23条解釈論
水平的制限
単独行為

第5章 独占禁止法と事業法の調整ルール
第1節 認可料金をめぐるカルテル規制の展開
認可申請カルテル─増車等料金を除く認可事項
認可料金申請カルテル
認可料金遵守カルテル
現行運賃認可制の性質 取引慣行に関する独占禁止法上の指針
認可権限を背景とした行政指導
第2節 大阪バス協会事件審判審決について
独占禁止法と事業法の関係
一般法・特別法説と運賃協定
本件審判審決の法律構成およびその問題点
認可申請の制限・拘束

第6章 手続法上の問題点と課題
第1節 公正取引委員会の調査手続の性格
カルテル事件調査手続の日本、米国、EC比較
カルテル事件調査における適正手続の保障
立法政策
第2節 公正取引委員会の事件処理手続の性格
事件処理手続の日本・米国・EC比較
公正取引委員会の事件処理手続の性格
今後の課題

移転価格.com 国際資産税.com

コラム

移転価格と独占禁止法との関係

「移転価格は独立企業間価格を問題視するわけですから、競争に打ち勝つために、価格戦略は取れないのでしょうか?」

「企業グループの事業戦略として、マーケットで低価格戦略を取るために、いっとき建値を独立企業間価格と違う価格でやり取りしてはいけないのでしょうか?」

低価格戦略を取ることも可能

独禁法上の問題

まず、親子間の取引については、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(以下、「指針」といいます。)の「(付) 親子会社・兄弟会社間の取引」「1」において、「親会社が株式の 100%を所有している子会社の場合には,通常,親子会社間の取引又は兄弟会社間の取引は実質的に同一企業内の行為に準ずるものと認められ,これらの取引は,原則として不公正な取引方法による規制を受けない」としていることから、独占禁止法上の問題は生じないことを示しています。

関連サイト

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移転価格の実務Q&A

移転価格文書の作成のしかた

税務便利辞典

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プライバシーポリシー

2.取引慣行に関する独占禁止法上の指針 利用目的

当社は、お客様から収集した個人情報を、お客様の同意を得ている場合または法令にもとづく場合を除いて、第三者に提供・開示いたしません。
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お問い合わせ先:info★shin-sei.jp(★を@に置き換えてお送りください。)

独占禁止法における垂直的制限行為に関する新ガイドライン
2015/02/16 独禁法対応, 独占禁止法, その他

流通・取引慣行ガイドラインとは、事業者が独占禁止法に違反せず安心して適法に事業活動を行えるようにすることを目的として、公正取引委員会が、流通・取引慣行のうちのどのような行為が独占禁止法に違反するかについて規定したものである。
今回の改正案で明確化された事項は、以下の5つである。すなわち、①垂直的制限行為が競争に及ぼす影響についての基本的な考え方、②垂直的制限行為に係わる適法・違法性判断基準、③流通調査、④選択的流通、⑤再販売価格維持行為規制における「正当な理由」である。
※垂直的制限行為:メーカーが流通業者(卸売業者、小売業者等)の販売価格・取扱商品・販売地域・取引先等の制限を行う行為(契約による制限のみならず、要請等による事実上の制限も含む)
※選択的流通:メーカーが一定基準を満たした流通業者に限定して自社商品の取扱を認める場合に、当該流通業者に対して自社商品の取扱を認めていない流通業者への転売を禁止すること
※再販売価格維持行為:メーカーが指定した価格で販売しない流通業者に対して、卸価格を高くしたり、出荷を停止したりして、流通業者に指定した価格を守らせること
以下では、特に重要な改正内容である、垂直的制限行為について説明する。

垂直的制限行為の規制について

公正な競争を阻害するおそれがある行為は不公正な取引方法として禁止されている(独占禁止法19条)が、垂直的制限行為が公正な競争を阻害するおそれがあるといえるかどうかについては、メーカー間競争の状況、流通業者間競争の状況、メーカーの市場における地位、流通業者の市場における地位、流通業者の事業活動への影響、流通業者の数等を総合的に考慮して判断する。そして、この判断においては、垂直的制限行為によって生じうる流通業者間の競争やメーカー間の競争を阻害する効果に加え、競争を促進する効果も考慮する、とされた。
このように、垂直的制限行為は、競争阻害効果のみならず、状況によっては競争促進効果を生ずることもあり、それらは状況次第であることが明示された。 取引慣行に関する独占禁止法上の指針
具体的には、新商品の販売の促進、新規参入の容易化、品質・サービスの向上などが認められる場合には、競争促進効果が認められうる。そして、それらの典型例も列挙されている。
ⅰメーカー商品の需要が他の流通業者によって既に喚起されている場合には新たな流通業者は自ら費用をかけては販売促進活動を行わなくなり、結果としてメーカーが期待する売上を実現できないことがある。こうしたいわゆるフリーライダー問題が起こりうる場合に、当該メーカーが一定地域を一流通業者のみに限定することは、フリーライダー問題を解消する有効策となりうる。
ⅱメーカーが自社商品の高品質の評判を確保するためには、販売先を、高品質な商品のみを取り扱うという評判を有する小売業者に限定することが有効策となりうる
ⅲメーカーが自社商品販売に際して流通業者に対して専用設備の設置等特有の投資を求めたい場合には、一定地域を特定流通業者にのみ限定することが有効策となりうる。
ⅳメーカーが自社商品に対する顧客の信頼(いわゆるブランドイメージ)を高めるために、流通業者に対してサービスの統一性や質の標準化を求めることによって、販売先や販売方法を制限することが有効策となりうる。

企業法務ナビよりお知らせ

本記事は、 7年以上前 に投稿された記事です。法律に関連する記事の特性上、法改正や特別法の施行、経過措置期間の経過、新たな条文解釈を示唆する判例の登場などにより、記事の内容と現在の法律運用・解釈との間に齟齬が生じている可能性もございます。何卒、ご注意ください。

公正取引委員会・経済産業省「スタートアップとの事業連携に関する指針」について

2021年3月29日、公正取引委員会(公取委)及び経済産業省は、スタートアップと連携事業者との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを目的として「スタートアップとの事業連携に関する指針」(以下「本指針」といいます)を公表しました。本指針は、NDA(秘密保持契約)、PoC(技術検証)契約、共同研究契約及びライセンス契約という4つの契約類型に着目し、これらの契約において生じる問題事例とその事例に対する独占禁止法上の考え方を整理するとともに、それらの具体的改善の方向として、問題の背景及び解決の方向性を示したものです。本稿では、本指針について、独占禁止法上の考え方を中心に解説します。

  • スタートアップと連携事業者との間で締結されるNDA(秘密保持契約)、PoC(技術検証)契約、共同研究契約及びライセンス契約の各契約類型について、公取委「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」に基づく事例及び独占禁止法上の考え方とともに、取引上の課題と解決方針が示されています。
  • 問題となり得る連携事業者の行為が該当し得る違反類型としては、優越的地位の濫用が中心となっています。
  • 本指針に掲げられた問題となり得る事例は、あくまで問題と「なり得る」ものであり、独占禁止法上の要件を満たせば優越的地位の濫用等として独占禁止法上問題となるというものです。
  • スタートアップや連携事業者は、本指針の事例と同様の事例に直面したときは、本指針の内容等を踏まえて優越的地位の濫用等の成否を具体的に検討することが求められます。

本指針の構成

4つの契約類型のうち、PoC(技術検証)契約については、聞き慣れない方もいるかもしれません。本指針によれば、PoC(Proof of Concept)とは、「事業連携によって想定した機能・性能や顧客価値の実現を検証し、共同研究開発に進むことができるかを判断するためのステップ」をいい、「検証のために、最低限かつ部分的な試作品(Minimum Viable Product)やプロトタイプを製作することも想定される」ものです(本指針10~11頁)。PoCは、企業間の研究開発提携において、NDAと共同研究開発契約との中間段階に位置付けられます。

「スタートアップ」「連携事業者」の定義

契約類型ごとの指針

取引慣行に関する独占禁止法上の指針
契約類型 問題となり得る行為 該当し得る違反類型
NDA(秘密保持契約) ① NDA未締結での営業秘密開示の要請 優越的地位の濫用
② スタートアップにのみ義務を課す片務的NDA、契約期間が短く自動更新されないNDAの要請 優越的地位の濫用
③ スタートアップの営業秘密の盗用(NDA違反) 競争者に対する取引妨害
PoC(技術検証)契約 ④ PoCの成果に対する必要な報酬の不払、PoC実施後のやり直し要求やそれに対する必要な報酬の不払 優越的地位の濫用
共同研究契約 ⑤ 連携事業者への成果の一方的帰属 優越的地位の濫用
⑥ 共同研究の大部分をスタートアップが行った場合における連携事業者への成果の単独又は共同帰属 優越的地位の濫用
⑦ 成果に基づく商品・役務や共同研究の経験を活かして新たに開発した成果に基づく商品・役務の販売先制限 排他条件付取引又は拘束条件付取引
ライセンス契約 ⑧ ライセンスの無償提供の要請 優越的地位の濫用
⑨ ライセンス技術の特許出願の制限 優越的地位の濫用
⑩ 商品・役務の販売先制限 排他条件付取引又は拘束条件付取引
その他(契約全体等)に係る問題 ⑪ 顧客情報提供の要請 優越的地位の濫用
⑫ 報酬の減額、支払遅延 優越的地位の濫用
⑬ 事業連携の成果に基づく商品・役務の損害賠償責任をスタートアップのみが負担する契約の要請 優越的地位の濫用
⑭ 他の事業者との取引制限 排他条件付取引又は拘束条件付取引
⑮ 最恵待遇条件の設定 拘束条件付取引

優越的地位の濫用とは

五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。

ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。

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